あなたの視覚は今なにを捉えているでしょうか。もちろんこの文字の羅列を捉えているはずです。では、ここでちょっとした実験を行ってみましょう。今すぐピンクのゾウを想像してみてください。恐らくほとんどの人がピンクのゾウが映像として浮かんだはずです。
もちろん目の前に現れたわけではなく、その映像がどこに見えているのかと言われると表現は難しいと思いますが、いわゆる思い浮かべた状態になったはずです。視覚では相変わらず文字の羅列を追っていながら、ピンクのゾウの映像は確かに認識できたでしょう。考えてみると不思議な現象が起こったのではないでしょうか。
ここではピンクのゾウを例にしましたが、当然ながら他のものでも同様です。他人の顔を思い出そうとするとき、目を閉じていた方が思い出しやすい場合もありますが、目を開けて全く関係のないものを見ながらでも思い出すことができるはずです。或いは、テスト中に虚空を見つめながら答えを必死に思い出そうとした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
人間は、視覚で捉えている映像とは関係のない映像を同時に見ることができるということです。現実の映像と思考の映像がオーバーラップしていると言えるでしょう。そんな複雑な状態を普段から見続けているのです。現実というものを可能な限り正確にシンプルに表現するとすれば「現実はリアルタイム」です。
ごく当たり前のことに聞こえると思いますが、「今起こっていることしか起こっていない」ということです。過去に起こったことは今起こっていないし、これから起こるかもしれないことも今はまだ起こっていません。「起こった」「起こっていない」はどちらもそう思っているだけで思考の中にしかないのです。
リアルタイムの映像を見ながら、思考の中の映像も見ていては現実の輪郭がぼやけてしまうのも無理はないでしょう。過去は記憶の中、未来は予測の中にしか存在せず、目の前で展開しているのは「今」だけです。
ところが人間は、目の前にある「今起こっている映像」に記憶や想像からなる映像を重ね合わせてしまいます。視覚的に見えているわけではないけれど、確かに見えているこうした思考による映像が、あなたを「今」というリアルタイムから遠ざけてしまいます。


